中古住宅を購入する方の多くが不安に思うのは「建物の状況」です。新築時から年数が経っていることから「購入後に雨漏りが発生したらどうしよう……」「見えない部分で劣化が進行しているのでは?」といった不安を抱えています。だからこそ、日本では依然として新築信仰が根強く残っているのです。
中古住宅取引がさかんな米国では売買前の「インスペクション」が普及しており、近年は日本でも少なからず見られるようになってきました。
MOKUJI
インスペクション(建物状況調査)とは、国が指定する講習を修了した建築士が実施する建物の調査を指します。
インスペクションで調査する部分は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分です。第三者の建築のプロが、専門的かつ客観的に建物の状況を調査してくれるため、買主にとっては大きな安心となります。
インスペクションは2000年頃から日本で普及し始めたため、歴史はそう古くありません。しかし、2018年4月から不動産会社に不動産を売買する方へのインスペクションの説明や斡旋が義務づけられたことで、急速に普及しています。
インスペクションは「買主のための制度」と思われがちですが、実は売主のメリットも少なくありません。
中古住宅購入時の主要な懸念事項の一つが、建物の劣化状態です。新築物件と異なり、立地や価格だけでなく、建物の状態そのものが重要な判断材料となります。高額な買い物である不動産において「建物の状態がわかる」ことは、物件の大きな付加価値となります。
また、インスペクションを実施した物件を購入すると、買主は次のような優遇を受けることができます。これもまた、物件の付加価値となります。
インスペクションを実施し、劣化事象などがないことが確認された住宅は、フラット35の「維持保全型」の対象となります。フラット35維持保全型は、当初5年間の金利が0.25%引き下げられます。
「既存住宅売買瑕疵保険」とは、中古住宅の検査と保証がセットになった保険です。瑕疵保険に加入することで、検査を実施した住宅を購入した後、構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分に係る瑕疵(かし・不具合など)が発見された場合、最大1,000万円まで修補費用が保証されます。
不動産の売主には、原則的に「契約不適合責任」が課されます。契約不適合責任とは、物件引き渡し後に契約内容と適合しない損傷や不具合が発覚した場合、修繕や減額などの対応をしなければならない責任です。
契約不適合責任における責任範囲は、契約と適合していない部分です。たとえば、雨漏りやシロアリ被害が見られていたとしても、そのことを双方が折込み済みで契約した場合は、契約不適合責任の対象となりません。したがって、インスペクションによって現状を把握するというメリットは、売主にとっても非常に大きいのです。
インスペクションの費用は、5〜7万円程度です。物件の魅力を高める方法としては、他にもハウスクリーニングや修繕といった手段がありますが、いずれも多くの場合、インスペクションより費用が高額です。
インスペクションも壁や天井を剝がして行う検査ではないため「絶対安心」とは言い切れませんが、売主の誠意も伝わる効果的な施策といえます。
ご来店予約やメールでのお問い合わせもこちらから
不動産査定AIが即査定額をお答えします